- ホーム
- 生産者・現地レポート
- 目から鱗。森林と農業生産の共存~フォレスト・ガーデン・プロジェクト その1
2014年6月26日
目から鱗。森林と農業生産の共存~フォレスト・ガーデン・プロジェクト その1
ランカ・オーガニック(スリランカ)
ノヴァが扱っているココナッツやカシューナッツを栽培しているのは、スリランカにあるランカ・オーガニックの生産者の方々です。現地を訪れると、そこには、目から鱗の栽培風景が広がっていました。その様子をご紹介いたします。
ランカオーガニックが1992年から開始した「フォレスト・ガーデン・プロジェクト」。森林農法(アグロフォレストリー)と呼ばれる農業形態です。簡単に言うと、「森林の自然植生をできるだけ生かしたまま、そこに多様な作物を植えて栽培する農法」といったところでしょうか。あるいは、森に存在する木々や草花と作物の苗をバランスよく植栽することにより、森に近い環境を作りながら、同時に作物も栽培できる方法。自然と人間の「共存共栄」の方法とも言えるかもしれません。一般的な農法のように、単一の作物を栽培するために自然林を開墾し続けることは、生態系を崩してしまう危険性をはらんでいます。その点、この森林農法では、生物多様性を維持して、将来の世代に豊かな自然を残すことができるのです。化学肥料や化学農薬を使わないというだけでなく、単なるオーガニックを超えたすばらしい環境に、訪れた私たちは感動せずにはいられませんでした。
それではランカ・オーガニックのフォレスト・ガーデン・プロジェクト生産者さんの実際の様子をご紹介しましょう。
プロジェクトが展開されている地域の一つ、マホ村。現地を案内してくださったラジさんによると、プロジェクトの開始当時は、産業もなく、道路も通っていないような非常に貧しい地域だったそうです。そもそも、貧しい地域の生活の向上が期待できることも、プロジェクト地域を選定する際の大切な要件でした。現在では200数十名の生産者がマホ村でのフォレスト・ガーデン・プロジェクトに参加しています。
私たちが最初に訪問したのは、マホ村のフォレスト・ガーデン生産者グループの中で一番生産量・売上が多く、成功例として他の生産者の目標的存在になっているという生産者さん。
案内のラジさんたちに連れられて到着したのは、山吹色のしゃれた平屋のお宅が佇む土地。緑に覆われ、まるで別荘のようだなぁ、と思いながら門をくぐり、裏庭のほうに進んでいくと・・・。 私たちの目の前に、一人の男性が、ナタを片手に裸足で登場!その野趣にあふれた(?)姿に、この方が家主であり、お目当ての生産者さんだということに気が付くまでに少し時間がかかりました。農作業中だったので、このような格好だったのだと後から気が付きましたが。。お宅の裏庭には、様々な木が植えられています。ココナッツ、カシューナッツ、パパイヤ、胡椒、ナツメグなどなど。。。一つの種類が一つの「畑」に植えられているのではなく、バランスよくあちらこちらに植えられている感じです。
娘さんがパパイヤを木からもぎって見せてくれました。 そして、裏庭にはココナッツの実が山積み!スリランカの家庭料理ではココナッツが欠かせないそうで、一日1個は消費するそうです。スパイシーなカレーにココナッツを入れると、コクが出るし栄養価もアップします。
農作業を手伝う人たちが雑草を刈っていました。森林農法といっても、適切に人の手を加えながら維持管理しています。 正直なところ、この段階では、まさかこの奥にさらなる広大な「農地」が広がっていようとは思いませんでした。どうして森の奥のほうに歩いていくのだろう??そう不思議に思いながら生産者さんの後を付いていったのです。この山全体が「フォレスト・ガーデン」=森林農法の農地、だとはっきり理解するには、恥ずかしながら数分を要してしまいました。
森に踏み入って数分のところに、大きなココナッツの木があり、18歳の息子さんが刃物が付いた長い棒でココナッツを木から落としていました。落ちた実を、器用にナタでバッサバッサと割り、「ハイ、どうぞ。」と私たちに渡してくれました。わぁ、嬉しい。早速一口。それは間違いなく、今までの人生でいちばん美味しいココナッツジュース、でした。がっしりとした体格のこの息子さんは、学校に通う傍ら、すでにお父さんの農業を手伝いながら、家業を継ぐ決意を固めていました。逞しく、自分の手で何でもできる青年。この環境の中で育まれた、生きる力。
さて、その先の森の中にどんどん進んでいきます。いわばここは彼らの庭なのですね。迷ってしまうような道なき道を、裸足でがっしがっしと大股で歩きながら進んでいきます。 右手にあったのは、大きなアリ塚!「時々コブラがアリ塚を狙うんだよ。」・・・こ、コブラ?? まさか今日はいないよね?と少し心配に。。
その他、途中でイノシシを捕まえる罠(イノシシを矢で撃つ仕組み!)が仕掛けてあったかと思うと、突然立ち止まり、「このカシューの木は虫にやられてダメになってるな。」といいながら、木の根元にナタを4,5回振り下ろしました。中から出てきたのは、大きな幼虫。カブトムシの太った幼虫の3倍はあるような。害虫の名前までは聞きませんでしたが。。生産者さんは毎日毎日、この山をこうして歩きながら、あちらこちらに植わっている作物と森全体を把握し、管理しているのです。
30分ほど歩いたでしょうか。山の頂上に到着。大きく深呼吸したくなるような、見渡す限りの美しい山々。頂上にも大きなカシューの木があり、たくさん蕾を付けていました。実が生ったら収穫し、加工して出荷、となるわけです。ノヴァが販売させていただいているカシューナッツが、このような素敵な方法で栽培されていたなんて。まさに「なんということでしょう」。ここが本当に農地なの?と信じられないような気持になります。
以前から興味を持っていた森林農法。一生忘れられない光景となりました。