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2014年6月27日
生産者さんの素顔~フォレスト・ガーデン・プロジェクト その2
ランカ・オーガニック(スリランカ)
さて、私たち一行は山という名の農地を下り、先ほどの素敵なご自宅にお邪魔しました。涼しく風の吹く、広いバルコニーでまた、ココナッツジュースやら、敷地で採れたパパイヤ、酸っぱい緑色の実(名前は忘れました)などが振る舞われました。また、スリランカのテレビでこの生産者さんのフォレストガーデンの取組みが大きく紹介されたとのことで、その映像も見せていただきました。
このご夫婦は、20年ほど前にこの土地に移り住み、見渡す限りのジャングルだったこの土地を、木を必要に応じ一本一本抜きながら作物を植えて行ったのです。きっと想像を絶する苦労があったのではないか? そう思い、「きっととても大変で、ご苦労も多かったでしょう?」とご夫婦に質問をしてみました。 でも返ってきた言葉は、意外なほど柔らかく落ち着いたものでした。 「でも、これが私たちの仕事だし、すべてが人生の一部分として受け止めています。」優しいまなざしと笑顔を崩すことなく答えるお二人。
親子そろって、アーティスト!
もう一つ、お伝えしたいことがあります。それは、この生産者さんが、親子そろってすばらしいアーティストだということ。まずはその作品をご覧ください。 お父さんのほうは、木彫りでさまざまなものを作るのが趣味だそうで、椅子、胸像、猟銃(!)、動物など、お宅にさまざまなアートが飾れていました。嬉しそうに、いろいろと手に取って見せてくださいました。
さてさて、この壁一面に飾った、金属板を打ち出して作ったアートをご覧ください。なんと、18歳の息子さんの作品だそう。にわかに信じ難いほどの完成度です。お父さんの才能を受け継いだのか、この環境がそうさせたのか。息子さんに「すごいねぇ!」と褒めると、少しはにかんでいました。まさに、森の中に住むアーティスト、ですね。本当に楽しみな息子さんです。
私たちは今回3人の生産者さんたちを訪れましたが、一口にフォレストガーデンと言っても、その栽培スケールややり方にバリエーションがあるのがわかりました。今回ご紹介した生産者さんは農地も広大で、野趣にあふれていますが、もう少し小規模にやっている別の生産者さんは、農地にさまざまな作物を美しく混植し、まさに美しい「ガーデン」のようでした。
いずれの場合も、自然の植生を生かした農地のデザインという点で共通です。そして、もう一つ。共通点と感じたのは、フォレストガーデンの生産者さんたちが、文字通り「大地に足がついた」存在であること。
私たちが現地を訪れてこのような農業のやり方を目の当たりにすると、なにか本当に特別なことのように感じて興奮してしまうのですが、生産者さんたちにとっては、それが普段の生活であり、粛々と行われている営みなのだ、と気づかされます。彼らは「すごいでしょう」と見せびらかすわけでもなく、裸足で、時には泥まみれになって森や植物と向き合う。そして、収入の向上・安定を目指しながら、あとは安心して子供たちに引き継ぐだけ、とあっさりと言う。
今回ご紹介した生産者さんがインタビューの最後に言われた言葉がとても印象的でした。
「我々が死ぬときは、何も天国に持っていけないんだよ。」
必要以上の欲を出さず、でも精一杯仕事をして、次の世代に渡す。 人生の営みが自然の循環の一つであることを感じさせてくれるような。
「葉っぱのフレディ」の話を思い出しました。